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『無題』(今現在は)

第2章 ~夜の仕事~

細く長い坂道を下って

住宅街が見えて来る

その中にマンションと

言う名のアパート

『吹風荘(ふきかぜそう)』

がある

その二階建ての奥の

部屋が春風春菜の家である

制服のポケットから

鍵を取り出し

ドアを開ける

「ただいま…。」

誰かが

「おかえり。」

と言う訳でもない部屋に

そう言う春風春菜

ドアを開けると

直ぐ玄関で

左側は風呂場

その隣はトイレ

右側はキッチン

冷蔵庫と電子レンジが

置かれている

襖を開けると六畳程の畳に

絨毯を敷き

ベッド

勉強机

それだけである

制服を脱ぎ

その脱いだ制服を

ハンガーに通し

壁に掛ける

私服に着替えて

ちょこっと一休み

学校の春風春菜は

ここには居ない

春風春菜の父と母と妹が

居ないから

立ち上がり部屋を出る

自転車に乗り

坂道と逆の道を下る

住宅街を抜け

街の方へと出て来る

しばらく走り

自転車を止める

ある建物の裏

自転車を押して

邪魔にならない場所に置き

鍵を掛けて

その建物の中へと

入って行く

春風春菜

中から賑やかな声が

聞こえて来た

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