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精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

{出て、どうするの?}

「逃げる…」

{どこに?}

「どこ…とにかく、僕は…逃げなきゃ……」
 言葉を口から出しながら、歩睦は思った。

(なぜ、僕は逃げなきゃいけないのか?楓先輩や、両親が逃げろと言ったから?)

  『土居!試合だ!…』
 一瞬、北沢の言葉が過ぎる。

{歩睦は実体に戻るよりも、ここに居る方が安全だよ。僕が…側にいるから…}

 モニターに映し出される、三人を見る。
 楓先輩が一人、真っ黒の動く物と戦っている。
 泣いて居る実。

{ここに居よう}
 小人が周りを飛びながら、やさしく声をかける。



「…ぁう…」
 歩睦は小さく呟く。

{歩睦?}

「違うんだ…僕は…」
 歩睦の身体が輝く。

{歩睦…力を使うの…}

「僕は北沢君を止めなきゃいけない気がする。いや、止められるのは、僕だけなんだ」
 歩睦のペンダントに輝きが集まる。

{歩睦は逃げるじゃなく、『戦う』を選ぶの?}

「選ぶ!」
 シッカリした瞳で小人を見る。

{分かった…歩睦の心を少し揺らしてごめんね}
 小人は姿が消え、声だけになった。


 映像も消え、真っ白な空間に一人取り残される歩睦。


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