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精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

     *

「もう始まるかな?」
 実がそわそわしている。

「そうですね。もう直ぐですよ」
 信司が、ビデオカメラのバッテリーを確認しながら言う。

「お母さん。試合終わったらお弁当にしようね」

「実はお弁当の方が楽しみなのね」
 景が実のホッペを突付く。

「うん。梢お婆ちゃんの食べたいもん!」
 にっこり笑う実。


「景さま…」
 紅葉の兄達が景に近づいて来る。

「どうしたの?」
 少し表情を曇らす景。

「公園内にグールが現れました…」

 景の顔が険しくなる。その顔を見た信司は、実に話しかける。

「…み、実君。もう少し前から応援しましょう!」
 信司は下の試合場が見える所に向うため手を出した。

「うん!」
 実は手を取り、前に進む。

 景は、信司と目を合せて、微笑んでから、報告に来た男の人たちに、色々指示している。

『――赤 南中学二年北沢賢人君 白 東中学二年土居歩睦君――』
 館内放送が体育館に響く。


「お兄ちゃん頑張れ!」
 実が大声で応援する。

 歩睦は二階席の方に腕を上げてその声援にこたえる。

「あ!手あげてくれた!聞こえたんだね」
 実が歩睦の方に手を振る。

「聞えたみたいですね」
 信司は実と一緒に手を振る。

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