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精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

 急いでビデオカメラを構えると、今から試合を始める歩睦に向ける。

 竹刀を構えながら〈そんきょ〉をして剣先を交える。
 主審の「はじめ」の声が響く。

「せりゃあっ!」
「うらああ!」
 お互い立ち上がって試合開始。

「いけ!がんばれ!」
 実は一所懸命応援している。


「おらぁ!!」
 歩睦に竹刀を横から当ててくる北沢。
「てっ!!」
 歩睦は首を押さえよろめく歩睦。


「あ!痛い」
 実が自分の首を抑えて叫ぶ。

「お父さんアレ!反則じゃない!」
 試合に文句を言う実。

「アレは反則じゃないよ…でも、変だね…」


「ぐぐっがあ゛ぁぁぁ」
 叫び声を上げながら、北沢が竹刀を振り回している。


(歩睦くん…どうかしたのでしょうか…)
 ビデオカメラ越しの試合を見ていると、試合の流れがおかしい事に気がつく。

 観戦していた他の大人の人たちも気が付いていた。

「去年の方がいい試合だった」
「なんだか、一方的な試合はつまらない」

「お兄ちゃんは、頑張ってるんだ!応援してよ!」
 プンプンと怒る実は、そんな陰口に大声で反論する。

「ああ、ごめんね」
 小さな子供に言われて、頭をかく大人たち。

  ドンッ! ガッガシャ!!
 歩睦は壁にぶつかる。

「場外!やめ!」
 主審が試合を止める。

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