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精霊と共に 歩睦の物語

第12章 歩睦、知識を集める

「…歩睦くん、ちょっといいか?」
 信司はテレビを見ていた歩睦の所に行く。

「なに?」
 歩睦はテレビの音を少し小さくする。、


「疲れている時に、ごめんね」
 信司が歩睦の向かいに座る。


「ううん、大丈夫だよ」
 ニコッと笑う歩睦。

 景も信司の隣に座った。


「…実は寝たの?」

「さっき、やっと寝たわ。興奮していたのか『お兄ちゃんの!お兄ちゃんが』
って今日の試合の事しきりに話していたわ」

「試合…実も剣道、習わせる?僕より強くなったりして!」
 歩睦がお道化ながら言う。


「歩睦!」
 信司が歩睦の話を遮る。

「と、父さん…な、なにさ」
 いつも穏やかな慎司からの強い言葉にびっくりする歩睦。

「どうして、そんなに、大丈夫な顔をする?今日の事、何も…
何も聞かないけど!気にならないか?」
 苦しそうな顔をしながら、歩睦を見つめる信司。


 歩睦の顔から笑顔がゆっくり消え、下を向く。

「歩睦くん。ごめんね。怒っているんじゃないよ。心配なんだ、急な展開に混乱していないかなって!!」
 信司はオロオロしながら言う。


「今日の事…聞いてもいいの?」

「もちろんだよ!僕は歩睦くんの父さんだよ。ドンドン聞いて!!」
 胸をドンと叩く信司。

「信司さんの説明聞いたら、混乱しそう!」
 景が頭を小さく振る。

「そうかな?ちゃんと伝えれる自信あるけど…」

「だって、レアの話をし始めると、学者モードになって、頭痛くなるわ」

「そ、そうかな??」


「はは。二人とも仲いいね」
 歩睦の顔に輝きが戻る。



「…聞きたい事は、いっぱいあるよ。でも、ユティルが一緒にいると、大体の事はわかるから…」


「わかる…か…」
 信司が歩睦の言葉を復唱する。

「ユティル…」
 景が目を閉じて呟く。

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