テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第12章 歩睦、知識を集める

{お二人とも、お久しぶりです}
 ユティルは片手を胸に当て一礼した形で現れる。


「あ!!」
 歩睦はいきなり現れたユティルを隠すように立ち上がる。


「久しぶりか…確かに、こうやって話すのは、久しぶりだな」
 信司がユティルの方を見る。

「私は、電話で声を聴いたばっかりだから、あまり久しぶりではないわ」

{あの時は、ああでもしないと…}
 ユティルが景の周りをクルクル回る。



「父さん…ユティルの事…知っていたの?」
 歩睦は驚きを隠せないまま信司に聞く。

「知っていたというか…」
 信司が少し遠くを見るような目で話をする。



「歩睦が生まれた病院の個室で
『僕は歩睦と共に有る者の土の精霊ノームだ』っていきなり現れた。
 六叉家(ろくさけ)生まれじゃない僕が、はっきり見えたから、声が出ないくらい驚いたよ」
 しみじみとした顔をする信司。

「六叉の私も、あんなにはっきり見えたり聞こえたりは、初めてだった…」
 景も思い出しながら話す。

「景さんもはじめてだったの?」
 信司が立ち上がるほど驚く。

「えぇ?そんなに驚くところ?」
 信司の驚きように驚く景。

「だって、あの時も落ち着いていたじゃないか!僕だけ興奮していた気がする」
 信司の興奮がおさまらない。


「まだ、名前を付けてない息子を、玲亜の精霊が『歩睦』と呼んだ。
 だからこの子は『特別』なんだと感じていたわよ」
 景がユティルの頭をなぜる。

{早く会いに行きたかったんだもん。
 お腹の中にいる歩睦とは心でつながっていたけど、せっかく歩睦が実体を使えるようになって、触れ合うことができる!
ホントは髪置きの儀までは、僕も準備があったけど…どうしても会いたかった}
 ユティルは恥ずかしそうに顔を赤めてくる。

「お腹の中?僕と話をしていたの?」
 歩睦はユティルに声をかける。

{話すっていうより、つながっているって感じ~}
 赤い顔でくるくる回転して、浮いているユティル。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ