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精霊と共に 歩睦の物語

第12章 歩睦、知識を集める

「で、今日の黒い塊事件…北沢君と戦ってたら、遥香が現れて…
 遥香を倒さないと…いけなくなってさ…」
 歩睦は思い出したくない事を思い出しながら言う。


「『彷徨う者』の幻惑されてね…対象者の一番嫌う事をするのよ」
 景が険しい顔になる。


「終わったのに…BBQに行く車の中で、変な夢を見たんだ…」
 歩睦の表情が見えなくなる。

「どんな?」
 信司が聞く。


  『男の大人が、子供を捕まえて、首を絞めていた』


 景が口を押えて震えている。


  『そしたら、その首がゴロンを落ちて僕の足元に転がってきた』

  『ソノ、首が、遥香だった』


「歩睦!
 それは遥香ちゃんじゃないわ!
 夢よ!
 影の幻惑から覚めてなかっただけ!」
 景が歩睦の肩をしっかり持つ。


「うん。分かるっているよ。
 BBQしたし、
 優勝のお祝いの花ももらった…」
 歩睦はうつむいたまま、景の言葉に返事をする。

 その声を聞いて、少しほっとする景。

「でも…」
 表情が確認できる位顔が上がる歩睦。

歩睦は、今にも泣き出すような目をしていた。

「歩睦…」

「わかっているのに……
  わーーーーって叫びたい気分だよ」
 頭をガシガシかきむしる歩睦。

「歩睦、歩睦……」
 景は、しっかり抱き締めて、何度も何度も名前を呼ぶ。

「楓先輩が『記憶と知識を取り違えないで』て声をかけてもらって、なんだか気持ちが落ち着いた…」
 涙が頬をつたっていく。


「楓君にはいつも、傍にいてくれて…よかった…」
 景は、優しく背中をなぜながら話す。




「楓先輩は…僕を守ってくれている人なの?
 他にもたくさんいるみたいだけど、
 僕ってそんなに、特別なの?」
 歩睦が信司と景を交互に見ている。

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