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精霊と共に 歩睦の物語

第13章 土御門

「おはようございます」
 朝、玄関にスーツをきちんときた楓が立っていた。

「あ…おはようございます」
 久しぶりに見る、本来の楓の姿に戸惑いを隠せない歩睦。

「どうした?この姿に惚れた?」
 ニヤッと不敵な笑顔の楓が近づいてきた。

「ち!違いますよ。ちょっとびっくりしただけです!」
 いつもの雰囲気といつもじゃない格好のちぐはぐに戸惑う歩睦。

「はいはい。車に乗った乗った!」
 歩睦の背中を押し車に誘導する楓。

「あ…は、はい」
 誘導されて車に乗る歩睦。


「おはよう。今日はよろしくね」
 信司が楓に声をかける。

「はい。お任せください」
 楓が腰から折り曲げる90度のお辞儀をする。

「楓ちゃん!かっこいいね」
 実が笑顔で言う。

「実くんに言われるデレますね」
 顔が緩む楓。

「そうだね。実はみんなを優しくしてくれるいい子だ」
 信司が実の頭をなぜなぜしている。


「楓くん、お待たせ」
 景が家から出てきた。

「いえ!どうぞ!」
 後部座席のドアを開け、頭を下げる楓。



「僕も行きたいのな!」
 実がおねだりの顔をする。

「実くんはもう少し大きくなったらね」
 慎司が優しくなだめる。

「…はーい」
 素直にあきらめる実。



「行ってきます…」
 景が慎司に言う。

「あぁ…」
 慎司が景の頭をポンと触る。



 車の後部座席に歩睦と景。
 助手席に楓が乗り込む。

 車がゆっくり動き出す。

「いってりゃっしゃい」
 手を降る実。

 歩睦も車の中から手を振る。

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