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精霊と共に 歩睦の物語

第13章 土御門

 車は社(やしろ)に向かう。

 車の中は静か…静かすぎる。

(いつもなら実が楽しそうに話をして、やかましいくらいなのに…)

 歩睦の心は不安でいっぱいだった。




{歩睦…大丈夫…}
 ユティルの声が聞こえる。


(大丈夫だよ。ちょっと緊張しているだ…)










「歩睦が……柱の…柱となりえる…星の刻に生まれた…子供なんだ…」
 信司は、言葉を選びながら言っている。



「その柱になるのが僕…」

「そう、歩睦は精霊と共にある者として産まれてきた…」
 景が歩睦をほほ笑みながら言う。

「柱ってなにするの?ただ立っているの?ずっと?」


「立っているか、どうか、わからない…」
 景が言葉を詰まらせる。


「結界を守るためお社に籠る…そとの世界からかくる災から守るとされている」
 信司が言葉をかぶせるように言う。


「柱になった人を知っている?」


「いいえ。私が知っているのは形式だけ、でも、分かっているのは、俗世とのつながりがなくなると言う事…」
 景が話す。


「じゃ、柱になったら、学校に行けなくなるって事?」


「……そうなると思うわ…
何らかの形はあっても自由はないと思うの…」
 景は言葉を濁しながら言う。






(あんな、事言われたら、もう、家に帰れないんだって思うだろ…)
 流れ行く車外風景をぼんやり眺めている歩睦。

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