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精霊と共に 歩睦の物語

第13章 土御門

車が止まる。

ここは 土御門のお社

波多で一番大きいとされる鳥居がある。


「着きました」
 楓が後部座席の扉を開ける。


「…うん」
 歩睦は重い足取りで車から降りる。



「では、歩睦様はこちらへ」
 楓の誘導で鳥居の前に立つ。


(楓先輩が、僕の事様って呼ぶ…)

胸がズキズキする。


(ココに入ると、もしかして、帰れなくなるのかも…


  思い出したくない…

  見たくない…


 どうして、こんな感情が溢れてくるの?)


わからない感情が心を支配していくから一層胸が苦しくなる。





「歩睦ちゃん、少し緊張してる?」
 楓が歩睦にだけ聞こえる声で話しかける。


「うん…」
 歩睦は胸を押さえながら言う。


「苦しい?どっか痛い?」
 心配そうな楓。


「押しつぶされそう…」
 声が震える歩睦。


 
 パシン!!

 楓が猫背になっている歩睦の背中を思いっきり叩く。


「ひゃ!!」
 不意打ちの攻撃に情けない声を出す歩睦。


 叩かれたが、痛みはほとんどない。むしろ、心地よい刺激だった。


 楓はじっと見つめる。


「か、楓先輩?」
 歩睦が楓に声を掛ける。


 楓はふうっと息を吐くと、歩睦の背中を摩り始めた。


「しっかりしなさい
 今からどんな事があっても私達が守るから…
 あなたは…あゆむちゃんは、そのままでいて…ね…」

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