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井上真緒編

第5章 5

真緒は電車に乗っている間、何となくぼうっとしていた。結婚はもう無理だなと思った。チリ子とどうこうというのだけではなく、ここのところは、全然うまくいっていなかったのだ。相手を一方的に責める気にもどっかなれないところもあった。それでも相手がチリ子だというのは、結構面倒だ。チリ子とは、会社で毎日顔を合わせなくてはいけないのだ。なんか会社を辞めたい気分になった。そして真緒は、結婚はもうやめることに決めた。涙が出てきたが、電車のなかだったので、ほんの僅かでなんとか押しとどめた。
家について明かりをつけると、チアキはいつも通り浮かび上がってきた。

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