歪んだ国とキミ
第4章 Ⅱ
「あ〜…疲れた。久しぶりに酒でも飲んで寝ようかな。」
自宅まであと数百メートルというところにコンビニがある。
彼女はコンビニに立ち寄り、数種類の缶酎ハイと塩気の強いつまみをいくつかを買い店を出た。
どれもアルコール度数の強めな甘いものだ。
250mlを3本、500mlを6本。
レジへ持って行った時の店員の驚いた顔を思い出すと笑いが込み上げてきた。
(私がこんだけ飲んじゃ悪いのかね?)
酒に強い彼女は一晩でこの量を飲み切るつもりらしい。
翌日が休日という事もあるのだろうが。
「あ。」
(こんなに買うなら酒屋に寄ればよかった。)
「…重い。」
あと少し。もう少しで愛する我が家でこのくそ重たい酎ハイ達を…。
「重そうですね。持ちましょうか?」
「にゃっ?!」
不意を突かれた所為で驚いてしまった。
「ご、ごめんなさい。驚かせてしまいました?」
「大丈夫です。」
声の主は若い女性だった。
いや、少女だ。
大きな瞳には長い睫。ふっくらとした唇。背は160はあるだろうか。それなりに高く、スラッとしている。肩位まで伸ばしている髪は癖のないサラサラストレート。何とも言えぬ好印象を与える可愛らしい少女であった。
だが何かがおかしい。
何がおかしいのかを理解するのに数秒の時間がかかってしまった。
「荷物、持つの手伝いますよ。」
その少女はにっこりと微笑んで彼女の持っている荷物に手を差し延べた。
「だ、大丈夫です、よ。ご親切にどうも。」
彼女は失礼の無いように精一杯笑顔で断った。
「そんな遠慮しないで。」
しかし少女はさらに微笑んで引き下がらない。
彼女が感じた少女への違和感。
少女の肌や髪は真っ白で、瞳は真っ赤。まるで白い兎の様だ。
それに10月だというのに少女は半袖のブラウスに焦げ茶色の半ズボンという薄着をしている。なのにまるで寒さなど感じていない様だ。
違和感は恐怖を産んだ。
少女の笑顔は歪む事なく、それが更に恐怖を与えた。