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歪んだ国とキミ

第4章 Ⅱ



(何、この子…。)


この少女が彼女に何かをしたわけではない。

ただ、一旦怖いと思ってしまったら説明などつかなくとも怖いのだ。
それがどんなに愛らしい少女であっても。

(関わっちゃ駄目だ。)

そう思った彼女は何も言わずにその場から立ち去った。

「あ、待って。」

少女は彼女の後をついて来た。

「待ってよ、待って。逃げちゃ駄目だよっ。」

(逃げる?!何この子、怖いっ…!!)

彼女は走った。少女から逃げる様に走った。
そして少女も彼女の後を追いかけ走った。

走りはじめて4、5分は経ったであろう。
声をかけられたのはコンビニを出てすぐだった。
コンビニから自宅まで歩いて4、5分。走ればほんの1、2分だ。なのに彼女はまだ走り続けている。


(何でっ…家っ…着かないのっ?!)


それから更に数分走り続けた。


いくら体力に自信のある彼女でも流石に息も切れ、もう走れないと思った時、ふとあの少女の気配が無くなっている事に気がついた。
後ろを振り返ってみると、誰もいない。



(もう、追いかけてこない…?)



人の気配が無い事を確認すると、一気に安堵感と疲労感が襲って来てその場へたり込んでしまった。


普段から彼女は普通のOLの様な制服を着て仕事をするわけではなく、上はパーカーに下はジーンズにパンプスという会社勤めらしくない格好で仕事をしている。
私服でいい、というかスーツで勤務するという社則はない為、皆私服なのだが、彼女のスタイルは少しラフ過ぎるかもしれない。
しかし彼女のラフスタイルに文句を言う上司はいない。むしろこのラフスタイルでなければ本郷燐ではないといった認識があるくらいだ。
普通のOLの様にタイトなスカートにヒールでなくてよかったとこれ程にまで心から思った事はないだろう。


(ヒールじゃなくてよかったぁ〜…走れなかった…よ…。)



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