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澪―みお―

第2章 井藤 美智子

はじめこそ主人には引き止められた。
しかし、私の中の思いをすべて打ち明けたら渋々とその手を離してくれた。
自由になれたのだ。

私はすぐに働き始め、小さな賃貸アパートで細々と暮らした。
ただ淡々と過ぎる毎日が、幸せだった。
何年か経つと、近所の公園で遊んでいる小さな女の子に目がいくようになっていた。
憎しみを抱いていたはずなのに腹を痛めたことには変わりないようで、徐々に娘のことを想うようになっていった。
今頃あの子はなにをしているのだろう。
母親がいないことで苦労はしてないだろうか。
もしかしたら、私はあの子に会いたいのかもしれない…
しかし、それは許されないし叶わないことなのだ。
そんな折だった。
元主人が私の心を読んだかのように、お義父さんの目を盗んでは私に娘の写真を送ってくれた。
日々育っていく娘の姿を見ることができて幸せだった。
あの手紙が届くまでは。

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