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アルカナの抄 時の息吹

第2章 「塔」正位置

また日付が変わり、新しい朝。そしてあたしは、新しい情報はなし。

来る日も来る日も掃除ばかり…本当に手がかりなんてあるのだろうか。

「いえ、諦めちゃダメよ!きっと帰れる!あたしは帰れる!!」
言い聞かせるように叫んだ時、なにかが飛んできて、思い切り頭に直撃した。

「ふんぎゃ!!」
石ほどではないが、ある程度固さを持ったもので、その衝撃は軽いとは言えなかった。

「いったいわね~…」
掃除という善行をしてる時に、なんでこんな仕打ちが。見ると、それは女性もののミュールのようだった。

「誰よ、まったく!」
どこから降ってきたんだ、と辺りをキョロキョロと探すと、少しして金髪の青年が走ってきた。

「すまない、この辺りに靴は落ちていなかったか?」

「落ちてきたわよ。あたしの頭に」
嫌みを込めて言い、足元に転がる靴を指差すと、青年は状況を理解したようだった。

「悪かったね、痛かったろう。君は…見たことない顔だね。どこの侍女だい?」
青年は自分を侍女だと思っているようだ。本当にそうなのだとしたら、自分はため口を聞いていい相手ではない。それでも怒らないのは、青年の懐の深さだろう。

「あたしは侍女じゃない。ただ…王さまとの交換条件で掃除してあげてるだけよ」
そう言うと、青年は目を見開く。

「…陛下が?」

「そうよ。…なによ、疑ってるの?」
確かめるように言った青年に、食って掛かる。

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