アルカナの抄 時の息吹
第2章 「塔」正位置
「いや、違うんだ。疑ってるんじゃない。陛下はその…女性が苦手だから、珍しいなと」
「そうなの?」
「君は…陛下とうまくやれてるんだね?」
「うまくはやれてないわよ。顔をあわせれば言い合ってばかりよ」
はあ、とため息混じりに言うと、青年はくすりと笑う。
「それは、うまくやれてるってことだよ」
青年は微笑みながら言った。どこが、と言い返そうとしたが、これ以上は不毛なのでやめた。
「…じゃあ、もう行くね。僕とはあまり話さない方がいい」
「…なんで?」
「陛下には…嫌われてるから。じゃあね」
そう言って足早に去っていく青年。…いい人そうじゃないの。嫌われてるって、なんでだろ。
「まあいいや」
他人のことは、と掃除をキリのいいところまで終わらせると、中へ戻った。
明かりの消された、少し暗い部屋。やや乱れたベッドに、女性が寝そべっていた。女性はそれほど若くなかったが、だからこそ増すのだろう女性的魅力と合わさり、妖艶な雰囲気をまとっていた。
「…遅かったわね」
扉を開けて入ってきた人物に、女性は怪しげに微笑む。
「…まったく、あんなところまで飛ばすから」
青年は呆れながらも、笑みを浮かべる。女性の前に身を屈め、持っていた靴に女性の足を入れた。
「ふふ」
女性はそれを眺めると、青年の頬に触れた。
「そうなの?」
「君は…陛下とうまくやれてるんだね?」
「うまくはやれてないわよ。顔をあわせれば言い合ってばかりよ」
はあ、とため息混じりに言うと、青年はくすりと笑う。
「それは、うまくやれてるってことだよ」
青年は微笑みながら言った。どこが、と言い返そうとしたが、これ以上は不毛なのでやめた。
「…じゃあ、もう行くね。僕とはあまり話さない方がいい」
「…なんで?」
「陛下には…嫌われてるから。じゃあね」
そう言って足早に去っていく青年。…いい人そうじゃないの。嫌われてるって、なんでだろ。
「まあいいや」
他人のことは、と掃除をキリのいいところまで終わらせると、中へ戻った。
明かりの消された、少し暗い部屋。やや乱れたベッドに、女性が寝そべっていた。女性はそれほど若くなかったが、だからこそ増すのだろう女性的魅力と合わさり、妖艶な雰囲気をまとっていた。
「…遅かったわね」
扉を開けて入ってきた人物に、女性は怪しげに微笑む。
「…まったく、あんなところまで飛ばすから」
青年は呆れながらも、笑みを浮かべる。女性の前に身を屈め、持っていた靴に女性の足を入れた。
「ふふ」
女性はそれを眺めると、青年の頬に触れた。