アルカナの抄 時の息吹
第2章 「塔」正位置
要約するとこうだ。
戦場へつき、いざ戦いを始めると、どうも様子がおかしい。敵の数は予想していたより少ない。そして時間稼ぎのような戦法ばかりをとっているように思える。
やはり妙だと諜報員を送り敵情を探らせると、実はこちらは囮で、真の目的は別にあった。相手の目的は、本拠地である城を直接叩くことだった。兵力を外に出しきらせたところを狙い、居城を――王を攻撃する作戦だったのだ。
「敵は少数で、航路により大砲を運んでいるようです。砲撃がゲリラ的なのは、攻撃しては退避し、河川のどこかに身を潜めているためです。急ぎ戦いを中断し、引き返してきたのですが…間に合わず申し訳ありません」
青年は頭を下げた。
河川を国境に挟んでいたのが、逆に脅威になるとは…。それは、強固な壁だと思い安心して背を向けていたのに、突然それが後ろから倒れてくるようなものだ。王は眉間にしわを寄せ、しばらく何も言わなかった。
「巡回兵を増員し、潜伏地の特定を急ぐ。…お前たちはもう下がれ。次の攻撃に備えて待機していろ」
目をそらすように言うと、青年は静かに下がった。王が退室し、隊も待機場所に戻っていった。
戦場へつき、いざ戦いを始めると、どうも様子がおかしい。敵の数は予想していたより少ない。そして時間稼ぎのような戦法ばかりをとっているように思える。
やはり妙だと諜報員を送り敵情を探らせると、実はこちらは囮で、真の目的は別にあった。相手の目的は、本拠地である城を直接叩くことだった。兵力を外に出しきらせたところを狙い、居城を――王を攻撃する作戦だったのだ。
「敵は少数で、航路により大砲を運んでいるようです。砲撃がゲリラ的なのは、攻撃しては退避し、河川のどこかに身を潜めているためです。急ぎ戦いを中断し、引き返してきたのですが…間に合わず申し訳ありません」
青年は頭を下げた。
河川を国境に挟んでいたのが、逆に脅威になるとは…。それは、強固な壁だと思い安心して背を向けていたのに、突然それが後ろから倒れてくるようなものだ。王は眉間にしわを寄せ、しばらく何も言わなかった。
「巡回兵を増員し、潜伏地の特定を急ぐ。…お前たちはもう下がれ。次の攻撃に備えて待機していろ」
目をそらすように言うと、青年は静かに下がった。王が退室し、隊も待機場所に戻っていった。