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アルカナの抄 時の息吹

第2章 「塔」正位置

そもそも、国境は常に警戒しているし、城付近はさらに厳重な警備体制で、地理的にも城へ近づくのは難しい。

だが、砲弾は確かに敵国のもので、かなりの命中度だった。どうやって砲撃の射程範囲内へ侵入したのか。…それとも、高い技術の大砲と相当腕のたつ砲撃手だったのだろうか。

どちらにしても、恐ろしい。何しろ、これほど近くにまで侵入を許したのは初めてだったからだ。城が直撃されるなど、これまででは考えられなかった。

王は、監視をしながら実はこのようなことを考えていた。つい思い出してしまう女の下着姿を必死に振り払いながらも、きちんと、しっかり、ちゃんと王として考えていたのだ。本当だ。

ハースは、王の間へ戻るよう、ぜえはあ言いながら王に進言した。王は眉間にさらに深くしわを刻み、王の間へと急いだ。





王がついた時には、部隊は王の間にずらりと整列し、待機していた。緊迫した雰囲気に、やはりただ事ではない、と察した王は、重い口を開いた。

「…何があった?」
王の問いに、例の金髪の青年が答える。

「急な帰還、申し訳ありません」
青年は最初にそう言い、事の経緯を話し始めた。

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