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アルカナの抄 時の息吹

第3章 「運命の輪」逆位置

「?…どうかしたか?」
あたしが口を押さえてうつむいているのに、王が気がついた。が、あたしは笑いを耐えるのに必死で、答えられない。ハースが気を利かせ、代わりに答える。

「この者は少々気分が優れないようで…。こういった生々しいものを見慣れていないのでしょう」

「傷はまだ治ってないのか?」

「ええ、この様子ではまだ暫くかかりそうです」
ちら、とハースが目配せをすると、医師が慌てて同意した。

「そうか…わかった」

ようやく笑いの波が収まり顔をあげると、王のハ…傷は、包帯ですっかり隠さ…覆われていた。

王の部屋を出ると、ハースがあたしを呼び止めた。

「このことは誰にも言うでないぞ」
息を潜めて言うハースの顔は、ものすごい形相だ。

「わかってますよ」
再び押し寄せてきた笑いに耐えながら、あたしは答えた。

こんなおもしろいネタ、ホントは言って回りたいけど!

「絶対だぞ」
ハースは最後にもう一度念を押す。万が一、陛下がお知りになったら…。ハースは、ぶるる、と身を震わせると、去っていった。

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