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アルカナの抄 時の息吹

第6章 「戦車」逆位置

穏やかに時が過ぎる。その間王は、髪が若干伸びている日もあったようだが、全体的に落ち着いているように見えた。あの日、自分が王のすべてを受け止めたからだろうか。ぼんやりと考えながら、廊下を歩いていた。

珍しく、侍女たちがヒソヒソと噂話をしている。王と、とある侍女との関係について。その侍女は城に上がってまだ日が浅いうち、どのようにして信頼を得たのか、軍師に取り立てられている。

さらには、私的にも王からの寵愛を受け、今では深い関係にある、と。


あたしは侍女じゃないわよ…最初から、今もずっと。

はあ、とため息をつき、ポリポリとこめかみをかく。

噂を聞いた侍女たちがあたしに寄越す視線は、例えば民衆が色話をする時のような下卑た目というよりは、純粋に興味を持っている、好奇の目といった感じだ。

“特別な侍女”として、何か期待しているようなキラキラした目で見てくることはあっても、よそよそしくされたり、陰口を叩かれたりされることはない。ましてや、面と向かって非難されることも今のところはない。

だが何にせよ、やりづらいことには変わりなかった。

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