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アルカナの抄 時の息吹

第6章 「戦車」逆位置

日が地平線の下へ落ちていき、民家の明かりも消えていく頃。いつものように女性に会いに来た青年は、部屋の異常な荒れ様に、言葉なく軽いため息をついた。そして、ベッド越しに、だらりとうなだれるように床に座る女性を見つける。

「やっと来たのね」
気配に気づいた女性は、そちらを見やることなく呟く。

「…また暴れたの?」
問うているのではない。

「ベッドへ」
青年の呆れまじりの言葉を無視して言い、ゆらりと立ち上がる。

「最近、城の中がにぎやかだね」
無視された言葉をさらに無視し、青年が穏やかに呟いた。

「なにしてるの早く!」

「もうやめよう」
苛立たしげな女性に反し、青年は静かに告げる。恐らく、青年は何もかもに気づいている。

青年の言葉に、女性はキッと振り向いた。それでも、青年は変わらず、笑みさえたたえて立っている。

「今日は私がやるわ。ほら早く来て」

「もう、終わりにしよう」
穏やかに、ゆっくりと言った。

「愛してる――愛してるわレクザム」
女性は強引に、青年をベッドへ押し倒していく。荒々しくボタンをはずしていく下着姿の女性に、青年は短く吐息をこぼした。

「もう気づいてるんでしょ?この関係も限界だって」

女性は、まるで何も聞こえていないように、脱衣させることに努めて集中している。

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