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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第4章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 

 夫の気持ちが理解できないまま、紗英子も無理に笑顔を作った。
「メリー・クリスマス」
 用意しておいた細長い箱を直輝に差し出す。
「これは?」
 直輝が片眉だけを器用にはね上げて見せる。これは演技ではない。長年の付き合いで、直輝が愕いたときは、この表情を見せるのは知っている。
 まあ、十三年の結婚生活で紗英子が直輝に記念日の贈り物をしたのはこれが初めてなのだから、彼が愕くのも無理はない。
「私からのプレゼント。いつも直輝さんから貰ってばかりだったでしょ。だから、今年からは私も何か用意しようと思って。急に思いついて買ったから、たいしたものは用意できなかったけど」
 グリーンの包装紙に〝For You〟とプリントされたゴールドのシールが貼ってある。
「紗英子がプレゼントくれるなんて、思ってもみなかったな」
 直輝は満更でもないらしく、包装紙を解きながら表情を緩ませている。そんな屈託ない彼の笑顔を見るのは久しぶりのような気がして、紗英子も嬉しくなった。

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