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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~

第4章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 

 縦長の箱がまず現れ、蓋を開くと、更に紺のベルベットの箱が入っている。直輝は待ちかねたように、ベルベッドの箱を開けた。
「おー、これは凄い」
 こんな風に歓ぶ彼を見ていると、付き合い始めた十四歳の頃を思い出す。学生服姿の直輝とセーラー服の紗英子はいつも二人一緒だった。あまりに始終くっついているので、何度か当時の担任や生徒指導の先生から呼ばれて、二人の関係について訊ねられたことさえあるほどだ。
 訊ねにくいことだけれどと前置きして訊かれたのは、当然ながら、二人がプラトニックな関係にとどまっているのかどうかという点においてであった。
 普通ならば、そこまで学校側が関与することはないのだが、ある生徒が二人のあまりの親密ぶりを親に話したところ、父兄の方から匿名で二人の関係について問い合わせがあり、全体の風紀を乱す元になりはしないのかと苦言を呈されたという。それで、やむなく二人を呼んで訊ねたという説明がなされた。
―俺たち、絶対に疚しいことなんてしてません。
 直輝は男らしく堂々と応え、そんな彼を紗英子は頼もしく見ていた。

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