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彼の声。

第1章 裏表

高校二年生、夏。
直に日が差してくる窓際の席。
耳を塞ぎたくなる蝉の鳴き声。
大嫌いな数学の時間。
一生懸命に生徒に諭そうとしている先生の声が自棄に遠く感じた。

肘をついて窓の外を見てみる。
ついでに大きな欠伸を一つ。
いつもと何ら変わりのない教室。

「葉月、ここの答え、言ってみろ」

ふと気が付くと目の前に眉間に皺を寄せた先生の姿が。
突然のことに「わあっ!」と大袈裟に驚いてしまった。

「え、えっとぉ…X=6…かな?」
「ハズレ」

教室にワッと笑いが起こる。
恥ずかしくて下を向いた。


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