テキストサイズ

↑逆転↓御斗戯世界

第3章 私と魔法使いとファーストキス

【Side: 威王】

駅の係員を呼ぶため、俺は階段を疾走した。今の俺には璃斗を助けることはできない。あのままあそこで璃斗についていったら、絶対まずいと思ったんだ。

でも、あとになってやっぱり一緒にいたらよかった、と後悔をした。


俺が係員に訳を説明して、駅のホームに戻って来たら、そこには彼女はいなかった。かわりにあるのは、3つの亡骸と大声をあげて泣いている少女だけだった。

係員は周りの惨状に、すぐにどこかに電話をしていた。俺は急いでその子に駆け寄り、訳を問いただした。

「大丈夫か?」

「うぇっ、う…!おねぇちゃんがっ…」

その少女の言葉と、線路の方を向いている視線に、俺は嫌な予感を感じた。まさか、そんなはずはない。だって璃斗は…。

「その、おねぇちゃんはどこ?」

「フードのひとと、あっちおちちゃった…でも、でんしゃがきて…」

俺は倒れそうになった。喉がカラカラになって言葉を出すことができない。

まだ、何もできていない。何も伝えていない。俺の幸せだった日常は、いきなり崩れさっていった。

「り、と…?そん、なッ…」

目から止めどなく涙が出てきた。

ゲームのエンディング以外で涙を流したのは、これがはじめてだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ