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第1章 君

「中宮君、また学校長く休んでたね。
私ノート取ってたから家で
自分のに写してきていいよ。
そのうち返してくれたらいいからっ」

「ありがとう沢井さん。
とても助かるよ。」


そう言って話したいが為に
ノートをいつだって渡す。
中宮君は笑顔で
でも感情のない言葉で返事する。

そこには[助かった]や[嬉しい]の感情
はたまた[めんどくさい]等の感情はないように思える。

彼と私の席は隣同士だ。

次の日彼はノートを返してくれた。
「とても見やすくて
わかり易いノートだったよ。
ありがとう」

「もう写し終わったの?
ゆっくりで良かったんだよ?」

「でもずっと借りてたら
沢井さん困ると思って。
昨日徹夜しちゃった」

私は、自分に気をつかってくれた気がして
嬉しかった。

授業中彼のノートを盗み見た。

白紙だった。

2~3ページしか使われて無いノートに
新しい情報は無かった。

私はその事に触れられなかった。

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