
Memory of Night2
第3章 名前
目前では数個の照明が揺れている。そこから発せられた光と熱で、スタジオ内はとても熱い。
「そのままこっち向いててねー」
「視線はここだよ」
「あんまり硬くならないで。自然な表情でいいからね」
カメラマンや照明を持つ人、鏡で光を調節しているスタッフ達の指示が飛び交い、宵の方へと視線が集まっている。
正直なところ、あまり居心地がいい空間ではなかった。パシャ、パシャとシャッターが切られる音に、内心辟易していた。
スタジオの中は独特の緊張感があって、そこに立たされる度に場違いな気がしてならない。
「――はーいOKー! 今日の撮影は終わりでいいよ。お疲れ様!」
監督者からようやくそう声がかかり、宵はほっと胸をなで下ろした。
真剣な瞳で宵に視線を向けていた人達の顔も、崩れる。
「お疲れ様ー」
「いい出来だよー」
「いえ……お世話になりました。お先に失礼します」
口々に労いの言葉をかけてくれるスタッフ達に頭を下げて、宵は照明の当たるステージを降りた。
