 
向かいのお兄さん
第14章 影
「…痛むの?」
『…』
「なぁ、痛むの?」
堪えていたものが、ふとした気の緩みで
脆くも崩れていった
あたしは声には出さないで
幾筋もの涙を流した
「…」
特に慌てたり、戸惑ったりする様子もなく
直也はあたしを見ていた
『…よ…』
あたしは顔を歪めた
『捻られたんだよ…あたしが…抵抗したら…腕…』
肩を押さえたまま
あたしは顔を下に向けた
見せたくないんだ
いつも強がりだったり、馬鹿正直だったりしたところしか
直也に見せたことのないあたしには
こんな泣き顔
とても見せられるようなもんじゃなかった
 
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