 
向かいのお兄さん
第14章 影
「ごめん」
見せたくないとか言っておきながら
あたしは顔を上げてしまった
直也はそばに落ちていたあたしの服を拾うと
目の前に置いてくれた
「ひとりで、着られる?」
あたしは首を横に振った
「腕、痛む?」
今度は縦に振った
直也は口には出さずに、困ったような笑顔を作ると
あたしに服を
着せていってくれた
「―――こっちの手なら、引っ張ってもいいか?」
ホテルから出てすぐに、直也はあたしにそう言った
『…』
「いいんだよな」
あたしが黙っていると、捻られていない方のあたしの手を
直也は引いた
 
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