向かいのお兄さん
第25章 聞いて
ガチャっと鍵を、そして扉を開いた
久しぶりに、この部屋に入った気がする
あたしが靴を脱いで中に上がると、直也も後に続いて入ってきた
『…』
相変わらずシンプルな部屋
久々のご主人の登場に、薄く埃が舞う
「…ここ?」
『うん』
直也を窺ってみたけれど、特に変わった様子はない
『…ほんとに、殺風景』
「知らないって」
『…』
部屋の中をグルグル回った
棚に置かれたものひとつひとつを眺めてみると
本が何冊かあった
『…』
手に取って、すっかり埃を被ってしまった本を見ていると
直也は興味ありげに覗き込んできた
「その本、俺も持ってる」
『…"欧米文化と日本人"…』
堅そうな題名だな…