向かいのお兄さん
第26章 幸せだったんだ
――――――
気がつくと、周りが騒がしかった
でもそれ以上に、
直也の心臓の音の方が
うるさいくらい
聞こえた
悲鳴と
ざわめきと
直也の心臓の音
『…直也…』
体中が
ズキズキと痛むんだけど
何でかな
道端に寝転がって
真っ暗な空を向いてるあたしを
直也は
抱きしめてくれていた
『直也…』
もう一度名前を呼ぶと
直也は抱きしめていた力を緩めた
「美咲…」
『…』
あたしは
無理矢理、顔を直也に向けた
すると直也は
あたしの顔を
優しく撫でてくれた
「美咲…」