向かいのお兄さん
第26章 幸せだったんだ
「いってー…」
直也は地面に手をついて
あたしの体ごと起こした
あたしも全身が痛んだけど、それ以上に
馬鹿みたいに泣きじゃくっている自分が
急に恥ずかしくなってきた
でも、だからって
涙は止まらないの
いくら泣いても
泣き足らないの
「美咲…」
直也はあたしの涙を唇で拭うと
そのままそっと、キスをした
「全部思い出した」
『ぅん…っうん…』
あたしは何度も何度も頷いた
直也は座ったまま
ギュッて抱きしめてくれたから
あたしは背中が伸びて
ちょっとだけ、痛かった
でも
全然、嫌な痛みじゃないの
もっと
もっと
もっと…抱きしめて…