向かいのお兄さん
第5章 日曜日にまた
あたしは鞄を置くと、中から数学の問題集を取りだし
部屋の真ん中にあった小さめのテーブルの上に乗せた
「…座布団ねぇわ」
『あ、平気だから』
そう言いながら、あたしはテーブルの前に座った
いつもと同じように、シャーペンを手にし、いざ取り組まん
『…』
カリカリカリ…
あたしがひとり、黙々と勉強しているのを
直也は黙って見ていた
『…』
手が止まった
わからない問題に直面中…
…こういう時の助っ人だもんね
『教えて』
あたしがそう言うと、直也は問題に目を通した
長めのまつげが、フサフサと動く
ほら
そうやって普通にしてたら、カッコイイのに…
「この問題、やんなくていいや」
『はい?』
直也はあたしの筆箱から赤ペンをあさり、問題集に印をつけていった
一通りつけ終わると、直也はあたしの前にボンッと問題集を置く
「俺が印つけたやつから潰してって」
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