向かいのお兄さん
第35章 彼女
「ところで、美咲ちゃんは直也と知り合いなの?」
『…』
どうせばれているんだろうけど
あたしは隠れるように俯いて、少し荒れた下唇を噛んだ
『あたし…も…』
「ほんとはね、直也とは一時期付き合ってたんだ」
あたしも直也の彼女です
言ってやろうとしたのに、その前に遮られた
『一時期…?』
「中学の時にね。
この前久しぶりに会って、また付き合いだしたんだよ?」
『…』
あたしは
何も言えなかった
先輩を押しのけて部屋に乗り込んでしまえば
直也に会えるんだろうけど
会いたく
ない
『…失礼しました』
「いいの?
直也に何も言わなくて…」
『…』
しね
って、伝えといてください…
『いえ…すいません』
あたしは早足で
その場を立ち去った