
向かいのお兄さん
第36章 どっち
頼もしい微笑みに
吸い込まれてしまいそうだ
『あの…えっと…』
そうなってしまいそうな自分に気づいて
あたしはパッと顔を伏せる
かっちゃんは
かっちゃんの前に突き出されたあたしの頭に
軽く口づけた
あたしは下を向いたまま、赤く血走った目を大きく開く
「いつでも、言え。
直也を忘れたいなら忘れさせてやるし、逆にあいつの代わりに相手してやってもいいから」
『相手って…』
「どうなんだよ?」
落ち着いた声は
体中に響くようだった
『…かっちゃんが…したいだけなんじゃないんですか?』
「あ、バレた?」
あたしが頬を膨らませると、かっちゃんはけらけらと笑いながら
また頭にキスをした
