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向かいのお兄さん

第38章 不器用なあんた






進めていた足が



止まった





止められた





大きな手が



あたしの手首を



掴んでいた







「やだ」






『…』






何言ってんだ…






『…離して』




「やだ」




『ざけんな』




「ふざけてない」






直也の顔



見ちゃった






ほっとしては、いなかった


悲しんでも、いなかった





あたしには、よくわからない顔をしたまま



直也はあたしを


抱きしめてくれた











『だ…から、離せ…』




「やだ」





背中から押さえ付ける熱が

久しぶりすぎて


手さえ震える





『い、まさら…何言ってんの…?』



「俺…むり」




『は…?』




耳元で聞こえる声に


動揺が見えた






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