
向かいのお兄さん
第38章 不器用なあんた
「話って、何?」
『うん…あのさ…』
一瞬口をつぐんでしまいそうになった
でももう
時間を掛けちゃダメだという思いが
すんなり言葉を伝えてくれた
『…別れよ?』
目を見ては
言えなかった
ずっと直也の作業着の、上から4つ目のボタンだけじっと見て
ゆっくり、はっきりと、伝えた
直也の顔は
もう見ることが出来ない
きっと、ほっとした顔してるに
違いない
こんな風に
別れ話に持ち込まれるなんて
思ってもみなかったけれど
『じゃ…ね』
とにかく顔は上げないで
体の向きを変え
足を進めた
