
向かいのお兄さん
第47章 記憶にない記憶
「俺の頭痛、移ったんかな?」
『え…?』
「俺も今日、朝から頭痛かったし」
今はなんともないけどな
と、直也は笑ってみせる
『…そうなのかな…』
「さあなー」
すると直也は、あたしの額にキスを落とした
いつもに増して優しい態度
甘えたくなる
『口がいい…』
「…」
直也は目を大きく開いて
苦笑してから
あたしの口元へ顔を近づけた
唇が重なる瞬間…
急に体がガクンと落ちた
!!
下に落ちたんじゃない
上に落ちたんだ
『何…!?』
慌てて辺りを見回したときには
もうそこはあたしの部屋ではなかった
ぐねぐねと歪んだ世界…
直也の姿もない
