
向かいのお兄さん
第48章 君が初めて
『帰っといたら、いいじゃん…』
なんか
どうやら
これ、夢じゃないみたい…
「お前はどうすんだよ?」
『あたしはー、ここにいとく』
「はあ?」
全く理解出来ないような表情を向けられ、あたしは苦笑するしかない
『ここにいとけば…多分、いつか帰れるから…』
確信なんて
もちろんない
「馬鹿か。
ここに居たってここにしか居られないっつの」
それは、もっともだ
でも…
『気がついたらここに居たから…また気がついたら、帰れてるかもしれないじゃん』
「…ほんと、頭ヤバイんじゃないの?」
『うん…』
でも…外に出たところで、何かが変わるとは思えない
きっと気を失ったり眠ったりしちゃえば
目が覚めたとき、もとに戻れている気がするから…
だからあたしは
黙って直也に手を振った
「…」
直也はずかずかとこっちに歩いて来ると
あたしの手をむんずと掴んだ
