
向かいのお兄さん
第49章 幼いお前
どういうわけで、俺の目の前に小さい美咲が現れたのかはわかんねぇけど
ここはとりあえず
普通に振る舞うか…
「その雛…」
『…!!』
雛に話を戻された美咲は、また怯えた
『ごめんなさい…』
「…」
『ごめんなさい…』
雛を隠す手が
カタカタと震え出す
『…の…』
今度は俺に
救いを求めるような目を向けた
『動かないの…この子…動かない…』
口元は左右にグイッと引っ張られた
ギュッと目を閉じると、耐え切れずに涙がこぼれた
『昨日は…ご飯粒、食べたのに…もう動かなぃ…』
「美咲…」
『死んじゃったぁ…』
勢いよく飛びついてきた小さな体
俺の体で仕舞われて
俺は美咲を
抱きしめ返した
