
向かいのお兄さん
第51章 甘い形で示したい
あたしは愛想笑いを浮かべながら、雅也さんから視線を逸らした
「え、何、警戒してんの?」
『いや…そんなことは全然、ないでございますですネ』
「だーいじょうぶだって。
さすがに仕事中は何もしないよ」
仕事中"は"…?
雅也さんは慣れた手つきで、ケーキを箱に入れていった
「知り合い?」
後ろから、遥がこそりと耳打ちしてくる
『あぁ…まぁ、一応…』
「美咲ちゃんの彼氏のお兄ちゃんでーす」
雅也さんは、わざとおちゃらけて言ってみせた
続いて遥に
「そちらのお客様は何にいたしましょう?」
と尋ねる
「あ、じゃあ…あたしはこれとこれで」
「かしこまりました」
カジュアルなエプロン姿の雅也さん
なんだかその格好が新鮮で、それでもしっくりしていて、あたしは何となく感心した
