
向かいのお兄さん
第51章 甘い形で示したい
遥が示したケーキも、また別の箱に入れられていく
『バイトですか?』
あたしは何となく、雅也さんに尋ねた
「いーや、オレはここのパティシエやってんだよ」
『え、そうなんですか!?』
驚きのあまり、あたしは大声を出してしまった
『…でもレジ…』
「今は人出が足りてないから、交代でレジしてんのー。
いつもはお菓子作ってんだぞ?」
なんか、想像出来ないや…
「お会計は、別で?」
『あ…』
「一緒でいいですよ」
遥が間髪入れずに言ったので、あたしは頷いておく
「はい、ありがとうございます。
まとめて、960円になりまーす」
雅也さんから、あたしは箱をふたつ受け取った
「あ、美咲、後で払ってくれたらいいから」
遥がとりあえず、1000円札を出してくれた
「はい、40円のお戻しでーす」
パチパチっとレジを打つ指も、もう慣れているのがよくわかる
「ありがとうございましたー」
『雅也さん』
笑顔でお客を見送ろうとする雅也さんに
ついついあたしは、声を掛けてしまった
「?」
『ちょっと…お願いがあるんですが…』
