
向かいのお兄さん
第52章 わだかまり
どうしてお菓子の作り方を教わりたいのか
という質問を、直也がして来なかったのは幸いだった
『直也…朝早くから何しにきたの?』
今日は日曜だから、仕事は休みのはずなのに…
「美咲を誘いにきた…」
『何に?』
「グータラしに」
あたしは吹き出しそうになったけれど、すぐにその反動も落ちた
「でも、今日はいいや」
『え?』
直也はあたしから離れると
「バイバイ」
と言いながら、自分の家に帰っていった
『…』
直也、雅也さんが絡むと、ちょっと変になる
和樹とかかっちゃんとか…いくらあたしが仲良く喋っても、そんなに口を挟んで来ないのに…
その日はずうっと
胸のどこかに、変なかたまりが引っかかっていた
全然晴れなくて…
気分、悪い…
