
向かいのお兄さん
第52章 わだかまり
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『直也と雅也さんって、仲悪いんですか?』
「え?」
あたしはバターを混ぜていた手を止めて、雅也さんの方を向いた
今日は火曜で、雅也さんにお菓子作りを教えてもらうと約束した二日目だった
前回同様、雅也さんにはあたしの家に来てもらった
「オレと直也の?」
『はい』
雅也さんもレシピ本を読むのを中断して、あたしの問いに答えてくれる
『なんか直也って…雅也さんのこと良く思ってないみたいで…』
「まあ、オレのことは大っ嫌いだろうなー」
さも当たり前のように、雅也さんは言った
『雅也さんは…?』
「ああ、オレは別に、あいつのことは嫌いじゃねーよ?」
それを聞けて、あたしは少しホッとした
また、バターを混ぜていく
『じゃあ、雅也さんが直也に意地悪でもしてきたんですか?』
「…美咲ちゃんは、一人っ子か?」
『はい、まあ…』
あたしが答えると
雅也さんは机に肘をつき、軽くため息をついた
