
向かいのお兄さん
第53章 崩れ
「…」
直也が不機嫌な理由は
わかってた
でも
笑ってほしい
あたし、頑張って作ったから…
『直也、あの…///』
照れて熱くなった顔には
冷たい風がちょうど良かった
『はいっ』
ちゃんとイメージした通りに
あたしは背中で隠しておいた
赤い袋で包んで、ピンクのリボンで結んだお菓子を
直也の前に差し出した
空は真っ暗で
頼りになるのは一本の街灯だけで
でもその街灯の明かりに映る直也の顔に…
笑わないかな
笑わないかな
って、
待ってるあたしがいて…
何だか
あたしが笑っちゃいそう
今日はバレンタインなんだよ?
知ってた?
びっくり、した?
いろんなこと
聞きたかったんだ…
「うっさい」
