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向かいのお兄さん

第53章 崩れ





手まで震えてた



お菓子を持って、気づいた






いろんな思いが、頭の奥から、目の前にまで、映る






最初に卵を混ぜていたときは

ワクワクしてた




生地を焼いていたときは

ドキドキしてた




完成したときは

ハラハラしてた





上手く袋に包めたときは

心の底からホッとした







グチャッ











あたしの親指が


袋越しに


ケーキに



穴を開けた






『馬鹿…バカ、馬鹿…あたしの馬鹿…あたしの、馬鹿…』




一度穴を開けてしまうと




あたしは壊れたように



袋をガチャガチャと傷めた





お菓子は直接、それ以上は傷めなかった





それでも角から


少しずつ砂みたいになっていった








あたし


何のために



頑張ったんだろ…





ガシャガシャガシャ…





『…』





シワを増やしていく袋を



遠くから見つめる






ガシャガシャガシャ…




『―…』





全部全部全部



もういらない






ガシャガシャガシャ




『~~…!!』





余計なこと



するんじゃなかった











ガシャガシャ


バリッ











『…』





袋が裂けて





あたしはやっと


手を止めた















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