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向かいのお兄さん

第53章 崩れ





『ぅっく…あぁあーん…っあぁあああーん!!』




全部吸い込まれていきそうなくらい真っ暗な空に向かって





泣いた








この声も


思いも


あたし自身も



涙さえも



吸い込まれてしまえばいいのに






『直也っ…ごめんなさいっ…ごめんなさい…ごめ、…なさ…』





なのに



酷いの






何も変わらないの






雨が泣き虫なあたしをごまかしてくれるだけで




何も変わらないの








ポツ ポツ ポツ ポツ





顔を


頭を



肩を





上から上から


あたしをどんどん染めていく雨が





優しくて



憎らしくて…






空からはあたしの無茶苦茶な顔がまる見えで



それが悔しいから、両手で顔を覆った








顎が


何度も何度も何度も何度も


震える





しんどい


でも



止まってくれない











あたしは



そのまま地面に座り込んで



袋に包まれたお菓子を


拾った











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