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向かいのお兄さん

第57章 共に歩んで




「本当に素敵な日」



そんなセリフをザラに言う人はなかなかいない…

とか思っていたけど、実際隣で女性の口から出たその言葉は、本当に自然だった




『散歩でもしに来たんですか?』


「ええ、そんなところね」



この人、どこ見てるのかなぁ…


あの新しいマンションかなぁ

それとも右に見えるショッピングセンター?



どこも…


見ていない気がする…





「あなた、年はいくつ?」



『19です』




「若いのねー、うらやましい」




名前も何もわからない


そんな女性と


1時間ほど一緒に過ごした



とりとめのない話の繋がりは、ひとつの物語みたいで…





「それじゃあ今日は帰ろうかしらね」




そう女性が切り出すまで、あたしは時間の感覚を忘れていた





『あ、はい。
さよなら』



「あなたはまだここにいる?」



『…わかりません。
でもすぐに帰ると思います』



「そう…」




寂しげだった


別にあたしが悲しませたわけじゃないのに、悪く思った



でも女性の顔は、すぐに笑顔になった




「また、会えたらいいわね」




頷いた



返事したら、また話が続いてしまいそうだったから…














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