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向かいのお兄さん

第57章 共に歩んで




驚いて振り向くと、あたしの目は遠くに直也の姿を捉えた


ただ



今まで見たことないくらい怒った顔…していた







あたしに向かって?



ううん、直也があたしをクソババアとか、言うはずない




じゃあ、この女性に向かって言ったの?





例えそうだとしても


女性はずっとにこやかな顔をしているだけだった





「美咲も、何でこんなとこにいんだよ?」




怒られたように感じたから、ビクビクしながら直也に顔を向けた




直也は地面を踏み鳴らすようにこっちへ近づいてきた





けれど




直也は一切あたしを見ていなかった





ずっと


女性に



女性の方に一直線に進んでいった





『…』






怒られるのはいやだけど


変な嫉妬を覚えた





直也はあたしを



見てくれない…







「ババア、こんなとこで何のんびりしてやがんだ」




直也は、よそを向いて澄まし顔を作る女性のすぐ目の前まで近づいた





女性はあくまで余裕の表情





「ちゃんとこっち見ろよ!!」



殴らんばかりの勢い、剣幕…



直也が怖いよ…




「そんなに怒鳴らないで?
耳が痛いわ」




女性が返した言葉は、直也を避けているように聞こえた



「うるせぇよ!
お前自分のことわかってんのか!?」



直也の怒鳴りを、女性ははいはいと受け流す




見ているこっちは



何でか胸が苦しくなった





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