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向かいのお兄さん

第57章 共に歩んで




「ほら、こい」



直也は、そっぽを向く女性の腕を強引に掴んだ



けれどその手はすぐに振りほどかれる





「痛いって言ってるでしょう?」



女性の顔は寂しげに笑っていた



直也の顔は



やっぱり怒っていた





「わがままも大概にしろってんだ!!」


『直也…!!』




それからなぜか


あたしが直也の腕を引っ張った





『そんな乱暴なことしないでよ
嫌がってるじゃん…』


「美咲には関係ないだろ!!」






沈黙が訪れた



ほんの数秒だけだったけど




それから



なんだか




視界が歪んだ




「…ごめ…」




そのグニャグニャになった世界に、申し訳なさそうな直也の顔を見つけた



『…ぁたしには…関係ないだろぅけど…』




そう


この女性と直也がどういった知り合いなのかとか


なんにもわかんない





それでも

わかんないから、わかりたかったし


関係ないから、関係を持ちたかった




心のどこかで直也が離れていきそうな不安を消してしまいたかった



『もぅ…わかった、いぃよ、何もない…知らない』



拗ねた子供だ



あたしは




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